今図書館に必要とされる機能はパーソナライズかもしれない。
- その道には書店員の屍が(from 書評サイト Loud Minority)
- http://loud-minority.cocolog-nifty.com/loud_minority/2007/01/post_51d5.html
- 資料への期待(from DORAの図書館日報)
- http://dora-hikarilibrary.air-nifty.com/diary/2007/01/post_b506.html
先日書いた『資料や人がいなければ「空間への期待」を満たすことはできないのでは?』がDORAさんとloudminorityさんのブログ上で引用されました。お二方どうもありがとうございます。
書店、図書館双方の現場の方からの貴重な話を伺うことができて、色々書きたいことはあるのですが、私事で中々ブログを書く時間を持てないので、気になった箇所のコメントで留めておこうかと思います。
1
そこで考えたのは、目的となる資料を事前にリサーチして、それをすぐに取り出せるようにするとか、先に情報として紹介してしまうとか、そういう手法なんです。それが、情報発信へと繋がっていくのですけど。
思ったのですが、この方法の究極とは今ネット上で注目されている「パーソナライズ」なのだと思います。パーソナライズについてはそこまで詳しく知らないのですが、ユーザーの情報行動から得られたデータを分析して、そのユーザーが欲すると予測されるデータを配信するのが特徴のサービス形態であると理解しています。
この方法で今最も成功しているのはAmazonですよね。Amazonで買い物をすると、Amazonのページに自分へのオススメ商品が表示されますが、この商品が本当に自分の読みたい本やCDであったということは何度もあります。あまりに正確すぎてちょっと怖いぐらいでした ^^);;;;;
思うに、「(心理的な)空間への期待」の向上を狙う図書館や書店にとっての一番の敵はAmazonのパーソナライズドサービスなのではないかと思います。図書館は個人情報を活用するのには消極的な傾向がありますから、Amazonと競合するのは一層難しいでしょう。かといって、今までと同じようにユーザーをある程度類型分けして選書したりコーナーを作ったりするのでは今の状況を打開するのは難しいのではないか?と先人たちの嘆きを聞いていると私は思います。
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もう一つのポイントは「CGM」でしょう。CGMとはユーザーがコンテンツを作り上げていくようなボトムアップ型システムのメディアのことですが、Amazonのリストマニア!などはこれにあたります。一般に、あるコンテンツが一定水準を超えた頻度の利用がなされるのは、そのコンテンツを必要とする「コミュニティ」が存在することが多い、と私は考えています。教科書や某携帯発のベストセラー小説などはその典型であると思います。つまり、いかに書店や図書館が、コミュニティを「囲い込む」かが現状打破の鍵ではないかと思います。
3
さて、DORAさんの構想をWEB2.0キーワードを用いて読み替えてみましたが、果たしてこれを図書館が実現することは可能であるのでしょうか。私は可能であると思います。今推進中のProject NEXT-L構想、最近カレントアウェアネス-Rで報じられたアナーバー地域図書館のSocial-Opacなどを見るに、すでに未来の図書館システムは実現しつつある、と思います。これがただの少数例で終わるのか、後々図書館全体へと普及していくのか、それは所詮机上の空論家である私には分かりません。とにかく今はDORAさんたちのようなアクティブなライブラリアンに頑張っていただきたいと思うばかりです。
end
少し感情的になってしまいましたが、とりあえず今思っていることは以上です。また例によって穴だらけな文章だと思うので、異論のあるかたは是非コメントまたはトラックバックを用いて反論していただきたいと思っております。基本的に「対立よりも協調」がモットーなのでどんなご意見もかまいません。
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資料や人がいなければ「空間への期待」を満たすことはできないのでは?
- 書店は「空間への期待」を選んだ。図書館は大丈夫?
- http://loud-minority.cocolog-nifty.com/loud_minority/2007/01/post_6e16.html
図書館が生き残るためには「空間への期待」に重視すべきという意見は基本的に賛成なのですが、以下の部分を見てひっかかりました。
私は逆なのではないかと思います。「空間」として期待されるためには人や資料がまず無ければならないと思うのです。書店が成立するためには本という商品と、それを整備する書店員がいなくては成立しませんよね?元書店員の方としてはそれは当たり前に存在するものなのかもしれませんが、図書館ではそういった低レイヤーの部分から考えなければならないのだと私は捉えています。
人も資料も大事なんだろうとは思いますが、まず何よりも「空間」として期待されるのが先なんじゃないかと思いました。
また、loud_minorityさんは人の要素をあまり重視されていませんが、図書館と書店とでは地域性という点で目的が異なるので、この辺りの議論は慎重を期す必要があるのではないかと思います。若造が何を言っていると思われるかも知れませんが^^);個人的にはヴィレッジバンガードだって書店員のコメントによって空間を構成しているから書店においても「人」は重要だと思います。
往来堂は「人への期待」だと思いますが、ニッチ路線であることは否めない。
万人に訴えるのであれば重要なのはベストセラーでもレファレンスでもなく、思わず入りたくなる雰囲気なんじゃないかと。
そもそもDORAさんのおっしゃる「空間への期待」はloud_minorityさんのおっしゃる「空間」と同義なのでしょうか?私の主観ですが、DORAさんは単に物理的な空間を意味していて、一方loud_minorityさんはより心理的な空間を意味しているように思えます。単なる推測ですがDORAさんもloud_minorityさんの示す「空間」を形成することが必要であると認知しているはずだと思います。「いま必要なこと」というエントリーにて「黙って棚に並べておいたら利用の少ない資料の利用をいかに増やすかで司書は勝負すべき」という言葉を紹介されていますし。つまりloud_minorityさんは反論の形式をとっていますがお二人の意見は協調し合うものなのではないかと。
基本的にはどこもライトユーザー、普段本屋なんか行かない層の取り込みを視野に入れて「空間への期待」に賭けている。
以上、少し疑問に思ったことをぱっと書いてみました。お粗末な反論で申し訳ないです。冒頭にも書いたとおり、私はloud_minorityさんの考えには基本的に賛成です。決してloud_minorityさんの意見に対立する意図でこのエントリーを書いたわけではありません。経験の無いただの大学生としては、どちらかというと元書店員としての経験による「空間」論をもっとお聞きして自分の穴だらけの考えをただしたいと思っているので是非また図書館に関する記事を書いていただきたいと思っております。
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id:myrmecoleon さんの「貸し本棚」構想
id:myrmecoleon さんの書いた「貸本棚」がいつの間にかにブクマされています。民営化の議論からしばらく経ちましたが、はてブの図書館タグはまだまだ賑やかですね。
貸し本棚ですが、これは中々素晴らしいアイデア。実際に倉庫レンタルのサービスなんてのがありますから、案外実行に移せそうな気がします。私の身の回りでも(人力ですが)これに近いことを友人間でやっていますしw
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- 大成功!寄贈本で図書館新設を試みる矢祭町
- http://d.hatena.ne.jp/kunimiya/20060806/p1
ここで思い出すのは、前から話題になっていた「矢祭もったいない図書館」。所蔵の書籍がすべて寄贈によって成り立っているという最近設立した図書館ですね。これは全国から募集をかけた訳ですが、寄贈した人々は単にボランティア精神のみで行動したわけでは無いと思うのです。自分の書籍を保管してくれる場所としても見ていた人は(特に地元の人々)一定数いたのではないでしょうか。
あくまで私見ですが、このような個人の持つコンテンツを共有する仕組みこそが本来の図書館の姿なのではないかなあと思います。正確には文庫活動と言うべきなのかも知れませんが。WEB2.0の主要な要素としてCGMがここ数年騒がれていますが、そのようなボトムアップ方式でコンテンツを増やしていく仕組みは実は昔からあったのではないか?と最近は考えています。
貸し本棚構想の話から随分話がずれました。いずれにしろ、誰かこれを是非実現化してもらって、読書家の本棚を閲覧してみたいものです。
関連記事(他サイト)
大成功!寄贈本で図書館新設を試みる矢祭町
以前に話題となった福島・矢祭町の、寄贈本で図書館を新設しようという試みの続報が毎日新聞にて報じられています。
- 福島・矢祭町:新設図書館の本、寄贈呼び掛け
- http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20060718k0000m040128000c.html
- 矢祭町:図書館新設に、全国から寄贈本3万5000冊 1日10件問い合わせ /福島
- http://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/fukushima/news/20060729ddlk07010367000c.html
- 矢祭町:寄贈本、5万冊突破 図書館来年開館目指し、きょうから本格整理作業 /福島
- http://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/fukushima/news/20060804ddlk07010276000c.html
(via 愚智提衡而立治之至也 )
報道によると、寄贈の呼びかけから10日にして、全国から約3万冊の書籍が集まり、8月3日までで約5万冊が集まったそうです。現在は県立図書館の司書の指導のもと、ボランティアによる分類作業が行われているそうです。
福島民報によれば、当初矢祭町の公共施設に所蔵されていた書籍は約9000冊。この状態から図書館を新設するには10億円以上の予算が必要でした。今回の寄贈呼びかけの成功が無ければ、矢祭町の図書館新設計画は頓挫していたことでしょう。
「本当の成功」にはまだ問題は山積み
書籍が確保できたから、即成功というわけにもいきません。図書館司書であるG.C.Wさんはブログ「愚智提衡而立治之至也」にて、以下のように述べています。
(リンク元:http://jurosodoh.cocolog-nifty.com/memorandum/2006/07/post_ebe6.html)
正直なところ,矢祭町が打ち出した方針の当否は5年くらい我慢して様子を見ないとわからない,というのが僕の本音です.大都会ならまだしも,この方法が矢祭町のような過疎の町で成功するかどうか,と問われれば,「公共図書館」に対するグラウンドデザインを描ける人材が矢祭町にいれば上手くいくかもしれませんよ,答えましょうか(^^;).
所蔵する書籍を確保したとしても、その後のスタッフ配置やサービスの内容など、図書館運営の問題が数多く残されています。実際、矢祭町には図書館司書はおらず、専門家を集めるだけの予算は中々つかないようです。案としては住民のボランティアで最初は運営するということで話が進んでいるようです。これからいかに公共図書館の運営機構を確立していくかが、矢祭町の図書館新設計画の「本当の成功」の鍵でしょうね。
図書館に関連したサービス
図書館に関連したサービスが、立て続けにリリースされています。
knezon(クネゾン)
- knezon - Amazonと図書館の連携
- http://knezon.knecht.jp/
- 図書館で借りる前にAmazonレビューで内容チェック
- http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0607/26/news060.html
指定した図書館の蔵書を検索すると、その本のAmazonでのレビューが表示されるというサービス。検索結果が複数の場合、最初の1冊しか表示されないので、著者名での検索するときは少し不自由かもしれません。今後はより快適な機能となってくれると良いですね。
knezonのように、複数の図書館に対応しているわけではありませんが、Firefoxのスクリプト、GreaseMonkey製のスクリプトで、似たような機能を持つものがあるようです。
Amazon、図書館向けサービス「Library Processing」を発表
- Amazon、「図書館にやさしい」新サービスを発表
- http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0608/01/news022.html
こちらは図書館運営側へのサービスですね。図書館の代わりに、バーコードの貼り付けやビニールカバーを取り付ける作業をAmazonが請け負うという内容。こういった図書館業務を請け負う企業は日本にもありますが(TRCが有名)Amazonはアメリカの図書館請負業界に進出する目算なのかもしれません。
関連記事
- 図書館系統での紹介(情報系の放送系)
- http://d.hatena.ne.jp/rokinia/20060802
図書館の役割
図書館とは何でしょうか?多くの方は、図書館と聞くと、まず市立図書館や県立図書館を思い浮かべるでしょう。図書館法では、以下のように図書館が定義されています。
図書,記録その他必要な資料を収集し,整理し,保存して,一般公衆の利用に供し,その教養,調査研究,レクリエーション等に資することを目的とする施設で,地方公共団体,日本赤十字社又は民法第34条の法人が設置するもの(学校に付属する図書館又は図書室を除く.)
要するに、「誰でも自由に情報を得たり、小説や音楽を楽しむことができるように資料を集めた施設」を図書館としています。*1ここで重要なのは、「一般公衆の利用に供し」の部分、つまり誰でも利用できる、ということにあります。
「社会権」という言葉があります。社会権とは、人が社会に生きる上で最低限の環境を得る権利のことです。現在の社会は情報化社会と言われており、情報をまったく得ることができなければ社会で生きていくことは出来ません。社会権を保護するためには、「知る権利・学習する権利」も保護される必要があります。この権利を保護するのが、図書館の本来の役割というわけです。*2
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今日は神保町へ古書巡りに行った。私が神保町を訪れたのはこれで二度目だが、改めてこの街の特殊さ、スケールの大きさに感嘆した。行った古書店すべてがそれぞれ独自の性格を持っており、その本の並べ方には妙な人間味があって楽しい。しかし、このような店に面白さを感じるということは、私が平生スーパーマーケット化した書店に慣れてしまったことを示している。かつて当たり前であった書店のスタイルが私たちの生活の中から消えてしまったことを非常に残念に思う。
私は図書館情報学を志したのは、神保町の古書店に見られるような"知的空間"に魅せられたからである。小学生の私は学校図書館や市立図書館に毎日通ったものだった。そして、あらゆる書籍が詰まった棚がずらりと並んでいる風景を見るたび、胸の高まりを覚えたものだ。無数の物語、賢人の思想が、図書館という空間の中で無限に折り重なっている様を幻視していたからである。
古書店にしろ、図書館にしろ、このような知的興奮を万人が得られるような素晴らしい文化施設が、生活から消えていってしまっているかのように私は思える。今の「情報化社会」という潮流によって、国内の情報格差は無くなっていったのかもしれないが、同時に「知識」の密度は低くなり、「知的空間」が解体されているのかもしれない。