図書館情報学を学ぶ

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レキシントンの幽霊

レキシントンの幽霊 (文春文庫)

レキシントンの幽霊 (文春文庫)

この短編集を読んだのはもう15度目だろうか。
最初に読んだときは、幻想的なモチーフ(生き物のように書かれている津波や氷男、パーティをする幽霊たちなど)に興味を持っていただけだった。今読んでみると、そのモチーフに付きまとう圧倒的な孤独感に驚く。
ねじまき鳥クロニクル』を読み返したときもそうだった。最初に読んだのは小学5年の頃だった。その時はただその幻想的な世界観を楽しんでいたに過ぎなかった。そして高校生の頃に読み返したときに、それらの世界観に込められたやるせない感情を察知して、不気味に感じた。『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』の、井戸にまつわる話を読んで、その思いが一層強まった。
保坂和志は「音楽は何度も聴くということは珍しくないのに、小説は一度読んでそれっきりになることが多い」と『小説の自由』で語り、再読がほとんどなされない現在一般の読書法を批判した。また、トーマス・マン魔の山』はよく若い頃に読むとそれほどではないが、壮年に差し掛かったときに読むと圧倒的に面白い、と言われることがある。(たしかちくま書房版の解説だったか)
再読するということには意味がある。私は村上春樹の小説を読んでいるときにそのことを実感する。