図書館情報学を学ぶ

はてなダイアリーで公開していたブログ「図書館情報学を学ぶ」のはてなブログ移行版です。

中国発の次世代ディスク、EVD

中国、独自DVDを推進・現行機生産08年までに停止
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20061203AT2M0103H02122006.html

要は、中国の企業が合同で開発したEVDというディスクを国内で普及させるために、関連企業が既存のDVDプレーヤーを生産停止し、EVD対応の再生機を全面に押し出していくということらしいです。上の記事ではまるでEVD専用プレーヤーのような書かれ方がされているけれども、紙のほうの記事によるとDVD再生機能もちゃんと備わっているとのこと。
そもそも、EVDって何?と思いググってみると、以下の記事が見つかりました。

EVD 【Enhanced Versatile Disk】 | ストレージ用語辞典
http://ew.hitachi-system.co.jp/w/EVD.html

この記事によると、2003年に発表されているようですね。知らなかった・・・・・・。特徴としては、DVDとほぼ同等のメディアに、HDTVクラスの高精細な映像を記録できる点でしょうか。しかし、紙版の日経新聞の記事では高画質のまま長時間での録画は不可能とされているため、HD-DVDやブルーレイには及ばないようです。
なぜ中国の企業がこのような戦略を立てたかというと、DVD再生機などを中国企業が生産する場合、日米欧に特許料を支払う必要性があり、利益が得にくい状況にあるということらしいです。そこで中国発のディスクを普及させて外国への特許料支払いのコストを下げようという狙い。
しかし、この戦略は成功するのでしょうかね……。2003年に発表されているにもかかわらず今まで日本で大きく騒がれてはこなかったことを考えると、全世界での成功は考えにくいような気がします。
いずれにしろ、知的財産権に関する事柄ではあるので、今後も要注目ですかね。

関連記事(他サイトより)

中国、独自DVDを推進、現行機生産08年までに停止、対応機に全面切り替え。
日本経済新聞 2006年12月3日付け(朝刊) 第5面
EVD:08年にDVD機生産終了、海賊版対策も万全 - 中国情報局
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2006&d=1130&f=it_1130_005.shtml
EVD:ハリウッドプッシュでHD DVDに対抗- 中国情報局
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2005&d=0928&f=it_0928_003.shtml
EVD特集
http://news.searchina.ne.jp/topic/246.html
中国の次世代DVD標準、普及に課題 - CNET Japan
http://japan.cnet.com/news/tech/story/0,2000056025,20064045,00.htm

探してみると、結構報道はされていたようですね。ディスク産業関係者にとっては周知の事柄なのでしょうか。

SPレコードの音楽等の貴重な音源のデジタル保存、政府が支援

日本経済新聞の1面に載せられているのでこのブログで取り上げる必要も無いかもしれませんが、とりあえず紹介しておきます。
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20060818AT3S1401018082006.html
日本経済新聞2006年8月18日付の記事によれば、政府・与党は文科省の来年度予算請求に、民間企業の行う文化的・歴史的に価値の高い音源の電子化・保存を財政支援する制度を作るための調査費を盛り込む予定であるらしいです。あくまで民間への財政支援ですが、音楽や音声に関するアーカイブづくりに弾みをつけるのではないでしょうか。
政府・与党の方針としては、特にSP盤レコードに収録された約六万曲の保存作業を支援することを考えているそうです。

日本レコード協会によると、坪内逍遙の朗読「ハムレット」や松岡洋右元外相の演説「日独伊三国同盟について」などがSP盤レコードになっている。 優れた伝統芸能にもかかわらず録音していない演奏を調査し、デジタル保存する取り組みも支援する。和楽器の演奏者ら重要無形文化財保持者(人間国宝)の高齢化が進んでいることから、記録・保存を急ぐ必要があるためだ。

(引用:日本経済新聞2006年8月18日(夕刊)1面より)
坪内による「ハムレット」は是非聞いてみたいものです。現在、国立国会図書館では、近代デジタルライブラリー貴重書画像データベースなど、貴重な文献を画像としてネット上で閲覧できるサービスを運営していますが、音楽・音声コンテンツについてのアーカイブはまだネット上では公開されていないようです。youtubeなどのWeb2.0型の動画配信サービスが流行している現在、文化的・歴史的に貴重な動画や音声なども手軽に利用したいと多くの方が思っているかと思います。私としては早急に制度化してほしいと期待しています。

大成功!寄贈本で図書館新設を試みる矢祭町

以前に話題となった福島・矢祭町の、寄贈本で図書館を新設しようという試みの続報が毎日新聞にて報じられています。

福島・矢祭町:新設図書館の本、寄贈呼び掛け
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20060718k0000m040128000c.html
矢祭町:図書館新設に、全国から寄贈本3万5000冊 1日10件問い合わせ /福島
http://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/fukushima/news/20060729ddlk07010367000c.html
矢祭町:寄贈本、5万冊突破 図書館来年開館目指し、きょうから本格整理作業 /福島
http://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/fukushima/news/20060804ddlk07010276000c.html

(via 愚智提衡而立治之至也
報道によると、寄贈の呼びかけから10日にして、全国から約3万冊の書籍が集まり、8月3日までで約5万冊が集まったそうです。現在は県立図書館の司書の指導のもと、ボランティアによる分類作業が行われているそうです。
福島民報によれば、当初矢祭町の公共施設に所蔵されていた書籍は約9000冊。この状態から図書館を新設するには10億円以上の予算が必要でした。今回の寄贈呼びかけの成功が無ければ、矢祭町の図書館新設計画は頓挫していたことでしょう。

「本当の成功」にはまだ問題は山積み

書籍が確保できたから、即成功というわけにもいきません。図書館司書であるG.C.Wさんはブログ「愚智提衡而立治之至也」にて、以下のように述べています。


正直なところ,矢祭町が打ち出した方針の当否は5年くらい我慢して様子を見ないとわからない,というのが僕の本音です.大都会ならまだしも,この方法が矢祭町のような過疎の町で成功するかどうか,と問われれば,「公共図書館」に対するグラウンドデザインを描ける人材が矢祭町にいれば上手くいくかもしれませんよ,答えましょうか(^^;).
リンク元http://jurosodoh.cocolog-nifty.com/memorandum/2006/07/post_ebe6.html
所蔵する書籍を確保したとしても、その後のスタッフ配置やサービスの内容など、図書館運営の問題が数多く残されています。実際、矢祭町には図書館司書はおらず、専門家を集めるだけの予算は中々つかないようです。案としては住民のボランティアで最初は運営するということで話が進んでいるようです。これからいかに公共図書館の運営機構を確立していくかが、矢祭町の図書館新設計画の「本当の成功」の鍵でしょうね。

図書館に関連したサービス

図書館に関連したサービスが、立て続けにリリースされています。

knezon(クネゾン)

knezon - Amazonと図書館の連携
http://knezon.knecht.jp/
図書館で借りる前にAmazonレビューで内容チェック
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0607/26/news060.html

指定した図書館の蔵書を検索すると、その本のAmazonでのレビューが表示されるというサービス。検索結果が複数の場合、最初の1冊しか表示されないので、著者名での検索するときは少し不自由かもしれません。今後はより快適な機能となってくれると良いですね。
knezonのように、複数の図書館に対応しているわけではありませんが、FirefoxスクリプトGreaseMonkey製のスクリプトで、似たような機能を持つものがあるようです。

図書館サイト-Amazon連携 Greasemonkeyスクリプト
http://d.hatena.ne.jp/amazonlib/20051101

Amazon、図書館向けサービス「Library Processing」を発表

Amazon、「図書館にやさしい」新サービスを発表
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0608/01/news022.html

こちらは図書館運営側へのサービスですね。図書館の代わりに、バーコードの貼り付けやビニールカバーを取り付ける作業をAmazonが請け負うという内容。こういった図書館業務を請け負う企業は日本にもありますが(TRCが有名)Amazonアメリカの図書館請負業界に進出する目算なのかもしれません。

関連記事

図書館系統での紹介(情報系の放送系)
http://d.hatena.ne.jp/rokinia/20060802

連想型検索エンジン「想 IMAGINE」

想 IMAGINE BOOK SERCH
http://imagine.bookmap.info/index.jsp

screenshot

書籍や文化財Wikipediaを横断検索できる「想」
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0607/28/news075.html

NII(国立情報学研究所)が、書籍検索システムを一般公開しました。その名も「想 IMAGINE BOOK SERCH」。この検索システムは、ユーザが打ちこんだ文章から検索語を切り出して、Wikipedia文化財新書マップなど、複数のデータベースをまとめて検索(これを横断検索といいます)します。そして、その検索結果から、ユーザが気になった項目をピックアップして、さらに検索をかけると、それに関連した情報を検索する。つまり、最初に打った検索語から次々と「連想」していく、というユニークな検索システムとなっています。
横断検索の対象を自由に変えられる部分は、Amazonの開発した検索システムA9と似ていますが、検索結果が次の検索に繋がるという連想形式はなかなか面白いと思います。個人的には、関連付けをもっと簡単に、感覚的にできるよう表示を工夫して欲しいとは思いますが。利用できるデータベースを増やしていく予定らしいので、今後に期待ですね。
以下、関連記事です。

Googleの限界は「人の手」で破る――国産の新検索「想」(ITmedia
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0606/08/news115.html
日本人のアタマを救え――書籍検索でネットに“知の信頼性”を(ITmedia)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0512/02/news047.html
IMAGINE(CLIS207研究室)
http://clis-matz.blogspot.com/2006/06/imagine.html