図書館情報学を学ぶ

はてなダイアリーで公開していたブログ「図書館情報学を学ぶ」のはてなブログ移行版です。

資料や人がいなければ「空間への期待」を満たすことはできないのでは?

書店は「空間への期待」を選んだ。図書館は大丈夫?
http://loud-minority.cocolog-nifty.com/loud_minority/2007/01/post_6e16.html

図書館が生き残るためには「空間への期待」に重視すべきという意見は基本的に賛成なのですが、以下の部分を見てひっかかりました。


人も資料も大事なんだろうとは思いますが、まず何よりも「空間」として期待されるのが先なんじゃないかと思いました。
私は逆なのではないかと思います。「空間」として期待されるためには人や資料がまず無ければならないと思うのです。書店が成立するためには本という商品と、それを整備する書店員がいなくては成立しませんよね?元書店員の方としてはそれは当たり前に存在するものなのかもしれませんが、図書館ではそういった低レイヤーの部分から考えなければならないのだと私は捉えています。

往来堂は「人への期待」だと思いますが、ニッチ路線であることは否めない。
また、loud_minorityさんは人の要素をあまり重視されていませんが、図書館と書店とでは地域性という点で目的が異なるので、この辺りの議論は慎重を期す必要があるのではないかと思います。若造が何を言っていると思われるかも知れませんが^^);個人的にはヴィレッジバンガードだって書店員のコメントによって空間を構成しているから書店においても「人」は重要だと思います。

万人に訴えるのであれば重要なのはベストセラーでもレファレンスでもなく、思わず入りたくなる雰囲気なんじゃないかと。

基本的にはどこもライトユーザー、普段本屋なんか行かない層の取り込みを視野に入れて「空間への期待」に賭けている。
そもそもDORAさんのおっしゃる「空間への期待」はloud_minorityさんのおっしゃる「空間」と同義なのでしょうか?私の主観ですが、DORAさんは単に物理的な空間を意味していて、一方loud_minorityさんはより心理的な空間を意味しているように思えます。単なる推測ですがDORAさんもloud_minorityさんの示す「空間」を形成することが必要であると認知しているはずだと思います。「いま必要なこと」というエントリーにて「黙って棚に並べておいたら利用の少ない資料の利用をいかに増やすかで司書は勝負すべき」という言葉を紹介されていますし。つまりloud_minorityさんは反論の形式をとっていますがお二人の意見は協調し合うものなのではないかと。
以上、少し疑問に思ったことをぱっと書いてみました。お粗末な反論で申し訳ないです。冒頭にも書いたとおり、私はloud_minorityさんの考えには基本的に賛成です。決してloud_minorityさんの意見に対立する意図でこのエントリーを書いたわけではありません。経験の無いただの大学生としては、どちらかというと元書店員としての経験による「空間」論をもっとお聞きして自分の穴だらけの考えをただしたいと思っているので是非また図書館に関する記事を書いていただきたいと思っております。

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図書館の重要性は「空間」にあるという意見は、『電子図書館の神話』にてバゾールも主張しています。この点からも、loud_minorityさんのおっしゃる意見は図書館情報学上の議論と協調するものなのではないかと考えています。loud_minorityさんの「入りたくなる雰囲気」というのは本質的には、コンテンツのファインダビリティ(=見つけられやすさ)の向上のことなのだと私は思います。『アンビエント・ファインダビリティ』でも図書館情報学に詳しいPeterMorville氏はloud_minorityさんと同様のこと、すなわち図書館におけるファインダビリティの向上の重要性を唱えています。