図書館情報学を学ぶ

はてなダイアリーで公開していたブログ「図書館情報学を学ぶ」のはてなブログ移行版です。

情報大航海プロジェクトに突きつけられた2つの質問

今週は情報処理学会研究大会が開催されているということで、東大に通い詰めています。
先日8日(月曜日)は情報大航海プロジェクトのシンポジウムに出席。全体のプログラムは改正著作権法の要点の講義や、欧州検索エンジンプロジェクト Quaero に関する招待講演、情報大航海プロジェクトの成果報告の総括などで、これだけでも充実した内容でした。しかし、これよりも私が注目したのはシンポジウムの最後になされた質疑応答でした。


とくに重要なのは、以下の2つです。

  • 情報大航海は "non Google"、Googleとは異なる方向性を目指していたはずだが、結局クラウドなど根元の思想はGoogleと同じだ。日本版ウェブ2.0のような日本独自の概念を打ち出すべきではないか?」
  • 「(プロジェクトが主なサービス像として挙げている)レコメンドとはいってもTwitterといったソーシャルメディアにこれらの技術はおされてしまうのではないか?局所的な問題やサービスを解決しようとしているだけで、統一的かつ革新的な戦略が見えてこない」

まず、この2つの質問は「今後生み出されていく製品・サービスのビジョン」に関わるという点で共通しています。加えて、GoogleTwitterという両極端の企業が引き合いにだされ、立体的な問いかけとなっています。GoogleGoogle Buzzを周回遅れでリリースしている状況から分かるように、Twitterといったソーシャルメディア勢力は「non Google」の1つの解といえるまで成長しています。しかし、情報大航海プロジェクトの打ち出した共通技術基盤は、ソーシャルメディアの戦略を直接支持するものではありません。であれば、情報大航海プロジェクトはGoogleでもTwitterでもない別の機軸を打ち出したサービスを世に送り出さなくてはなりません。それはいったい何なのか?このような課題が2つの質問を統合すると見えてきます。

2つの質問に対して、喜連川先生は「サイバー・フィジカル・システム(CPS)」というビジョンを掲げました。CPSは、センサーが生み出す膨大な実世界観測データが戦略的社会サービスを生み出すというサイクルだそうです。たしかに携帯電話やSuicaといったデバイスが発達している日本ならではの戦略であるといえるでしょう。しかし、最近マイクロソフトが発表した衝撃的な拡張現実地図iPhoneAndroidなどのデバイス浸出の動きをみると、喜連川先生の回答に安心してはいられない状況であるといえるのではないでしょうか。

確実にいえることは、もはやこの課題は情報大航海プロジェクトという国主導の枠組みから離れて、ベンチャー企業などの民間が担う時期にあるということです。現在、情報大航海プロジェクトの下位組織として次世代パーソナルサービス推進コンソーシアムという組織が発足されており、私の所属している株式会社しずくラボも微力ながら関わっています。このように国から用意していただいた技術や場をどのように活かしていくかを考えていかなければならないと思うところです。