図書館情報学を学ぶ

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小田原市立図書館のアニメ脚本コレクションの意義

公立図書館はときに貴重資料を所蔵していることがあるのですが、珍しいことにアニメの脚本資料のコレクションを所蔵する公立図書館が現れたそうですね。

アニメの脚本を手がけてきた首藤剛志氏が、かつて居住していた小田原市の市立図書館に自身の脚本資料等1400点以上を寄贈したそうです。
公立図書館ではときとして地域の貴重資料を所蔵していることがあります。例えばとある県立図書館では地方の知識人の文庫や、戦時中の資料などが書庫に収められているということがあります。申請しないと閲覧できなかったり、まだ整理作業中で公開されていなかったりと一般の人からはあまり認知されていませんが、このような貴重資料を保存する役割も図書館が担っていたりします。
なので、今回の寄贈それ自体は特異なことでは無いと思うのですが、注目すべきはアニメという比較的最近の文化の資料であるという点ですね。以前、明治大学に同人誌即売会COMIC1の見本誌を寄贈するという話が騒動となっていましたが、マンガやアニメなどを1つの文化資料として扱おうとする動きが図書館と製作側の双方で出始めているようです。その中で、脚本家が自主的に資料を寄贈するという活動は、リエーターに対するアーカイブの協力を促すという点で意義があるものなのではないでしょうか。
図書館という機関は、利用者だけでなく資料の作り手、または資料を提供する側の協力があって成り立つものだと自分は思います。なので、首藤氏のようなクリエーターに対して資料保存の点から協力していく活動は、将来的に図書館が支持される基盤が創られるのではないでしょうか。
出版されていない資料を所蔵することで、公立図書館はどのような便益を得られるのか。この点については今後も少し考えていきたいですね。

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ニューヨーク公共図書館の事例を紹介した書籍。この中で、とあるジャーナリストが本を出版した際に、その取材資料を図書館に寄贈するというエピソードが登場します。資料の寄贈は単に文化保存に留まらず、裁判などで利用されるなど、より重要な局面で効果を与えることにつながるのかもしれませんね。
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