図書館情報学を学ぶ

はてなダイアリーで公開していたブログ「図書館情報学を学ぶ」のはてなブログ移行版です。

Webの読書コミュニティ=小説コミュニティなのが少し不満

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photo by San Mateo County Library

読書コミュニティとその傾向

Project Shizukuの開発に参加してから、Web上の読書コミュニティに興味を持つようになって色々なところを閲覧したり参加するようになりました。

上の記事にある「本棚.org」や「booklog」、「本を読む人々」などの他にも、「たなぞう」というWebサービスも試しました。それぞれWebサービスとして非常に完成されていると思います。
しかし、少し不満に思うのは話題となる本の傾向です。コミュニティ色の最も強い読書系SNS「本を読む人々」などに顕著なのですが、話題となっているのはほとんど小説などの読み物なのです。この「読書=小説を読む」という雰囲気はWeb上のコミュニティでは一般的なようで、例えば「はてな年間百冊」グループ(g:book100)でも小説(特にライトノベル)についての記事が大半のようです。

「だれかと語りたい本」は小説だけではない

別に小説やライトノベルが嫌いなわけではなく、むしろ好きな方です。子どもの頃はハリーポッターやら指輪物語やら村上春樹などもよく読みました。ライトノベルでは「オーフェン」シリーズなど。今でも保坂和志長嶋有といった、日常系の小説を主によく読んでいます。
ただし、私はそれ以外にも科学系の読み物や新書、学術書なども同じくらい好んで読みます。最近では現象学という哲学の領域にはまっていて、フッサールの晩年の著作『デカルト的省察 (岩波文庫)』を読んでいるのですが、それについて語り合えるコミュニティを上記のWebサービス上で探すのは少し難しいかと思います。
松岡正剛の千夜千冊を熱中して読むような私の関心領域と、上記の読書コミュニティとでは少しズレがあって、いささか寂しく感じてしまうのです。
そして、私のような人というのは沢山ではなくとも、無視できない数はいるのではないかと思うです。

「専門分野」と「その本だけ」の中間層が無い

小説以外の本について語りたいのであれば、その内容についてのコミュニティ、例えばmixiのコミュニティや2ちゃんねるなどの掲示板に参加すればいいではないか、と言われるかもしれません。しかし、そういったコミュニティはいささか専門的すぎて、その分野について数冊本を読んだだけの素人にとっては参加を遠慮してしまいがちになってしまいます。こちらとしては数冊分の軽い会話をできればいいのであって、その分野について深く語りたいわけではないわけです。かといって、はてなダイアリーキーワードリンクをたどって、ブログにコメントをするといった、コメントベースでは軽すぎる。多くの人々と語れる場がほしいのです。
ようは小説以外の本に関しては、ディープなコミュニティか、Amazonの書評や記事コメントなどのライトなコミュニケーションなどしかなく、その中間にあるようなコミュニティがWeb上に無いのですね。
今後Web上の読書コミュニティが、小説やライトノベル以外の本に対しても開かれているようになってほしいなあと思います。

おわりに:読書傾向と図書館・本屋・読書コミュニティの因果関係

考えてみると、読書傾向が小説に偏るという話は図書館や本屋でもよく見かけますね。これは一般的に読書傾向が小説に偏るから図書館や本屋の書籍構成が小説に偏るのか、それとも図書館や本屋の傾向の偏りが一般の読書傾向や読書コミュニティのあり方に影響を与えているのか。
普通に考えると前者のように思えますが、そう考えると矢祭町立もったいない図書館が寄贈だけで蔵書構成することができた理由が少し釈然としないように思います。
どちらなんでしょうね^ ^); と図書館系の話題も振っておわりにしたいと思います。