図書館情報学を学ぶ

はてなダイアリーで公開していたブログ「図書館情報学を学ぶ」のはてなブログ移行版です。

図書館は有料化すべきか論のまとめ(2)〜もし有料化されたとしたら〜

先日まとめた「図書館は有料化すべきか論+日本では公共図書館の意義はあるのか論。現在のまとめ」の続報です。12月20日から12月24日の5日間に投稿された関係記事を主題別にまとめてみました。
前回は図書館法の話や公共図書館の意義など、理念的な議論となっていました。一方、今回は実際に有料化したらどうなるかという、現実的な議論へと移行しています。

有料サービスの収入はどこに入るか

日々記―へっぽこライブラリアンの日常―: 図書館有料化の話に少し便乗してみる。
http://hibiki.cocolog-nifty.com/blogger/2007/12/post_b576.html

図書館の無料化原則を支持した上で、もし利益が図書館に還元されるような仕組みがあるのなら、有料化、やってもいいだろうと主張されています。
現在の公立図書館の制度では、そこでの利益は自治体もしくは管理を委託された指定管理者の収入として計上されます。なので、図書館内で有料サービスや広告などを行ったとしても、それが図書館の管理費に使われるとは限りません。
公共図書館の有料化を行うとしたら、実際は部分的なサービスの有料化となると思いますが、そのためには利益がしっかり図書館に還元されるようなモデルを考えていく必要があるのかもしれませんね。
上の記事のコメント欄にて、まる3さんも、まず必要なのは、図書館の単独会計化ではないかと、思う訳です。と書かれています。

図書館を有料にしたらいくらかかるか

上記記事ではサービスを部分的に有料化した場合を想定した意見を述べていましたが、以下では図書館のサービスをすべて有料化という、より大規模なシミュレーションが行われています。

図書館雑記&日記兼用:図書館有料化 - livedoor Blog(ブログ)
http://blog.livedoor.jp/lib110ka/archives/51440286.html

こちらでは、「市場化の時代を生き抜く図書館―指定管理者制度による図書館経営とその評価」にて算出されている、図書館サービスごとの利用コストの試算が紹介されています。その上で、 これをふまえて、図書館サービスを有料化するとしたらいくら取りますか?と問いかけています。

死ぬほど大雑把に有料化した場合にとられる利用料金を試算してみる - かたつむりは電子図書館の夢をみるか
http://d.hatena.ne.jp/min2-fly/20071221/1198262075
大ざっぱすぎたので訂正-公共図書館を利用利用金で運営するとしたら? - かたつむりは電子図書館の夢をみるか
http://d.hatena.ne.jp/min2-fly/20071223/1198368561

こちらでは、id:min2-flyさんが『日本の図書館』2006年度版に掲載されている経費のデータから、有料化された場合に発生する個人の年会費の料金を算出しています。
結果は、公立図書館の場合、年会費は最低でも4000円〜6000円となるとのこと。ただし、有料化による著作権料の支払い義務の発生と、利用登録者の減少が記事では指摘されており、現実的にはこの試算を上回る金額になるようです。

図書館有料化論の今後

有料化のシミュレーションが為されるなど、建設的な方向へ議論が進んでいますが、これに関連して今後どのように図書館の議論を進めていくかについて記事が書かれています。

図書館で、うちらは一体どうなりたいの? - 図書館学徒未満
http://d.hatena.ne.jp/aliliput/20071221#p1

図書館がある目的の産物である以上、その存在意義を評価する方法は只一つです。すなわち「その目的を達成できているかどうか」で判断する。だから「図書館要るか要らないか」の話をするんだったら、その前に「我々は一体どうありたいのか」という話をするべきだと思います。

人が、学校が、村が、街が、市が、県が、地方が、国が、今後どうありたいのか、どうなって行きたいのか、その為に図書館には如何なる役割を期待しているのか、公共性ってそういうことじゃないの?民営化良い悪いとか存在意義云々というのはその先の話です。

図書館の存在意義について消極的に議論するのではなく、図書館の理想を語った上で現状を批判するというポジティブな方向で議論すべきと主張されています。これは、今後ネット上で図書館の建設的な議論がなされるためには非常に重要な視点だと思います。このような議論が行われれば、利用者の要望が図書館サービスに取り入れられ、図書館運営の改善に繋がるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

公共図書館さん、実戦的な援護理論は筑波大学からも降ってきませんよ - Tohru’s diary
http://sakuraya.or.tp/blog_t/index.cgi?no=440

公共図書館とはなんぞや、から始まり、その目的や役割を説いた学術的な理論などは、自らの事業活動の根拠として当然必要なのですが、しかしそれを現場でそのまま使用するというのは無謀なことだよね

公共図書館は現場と学術が剥離して結びついていないのが現状なのかな、と。

現場と学術が連携できていないという指摘は図書館情報学界隈でよく聴きます。これについては学生である私には何ともしがたいです。現職の図書館員の方のブログが増えて、Web上で意見交換が成されれば、現場と学術とが連携できるのではないかと期待しています。

「図書館法改正」というテーマでのワークショップ - ACADEMIC RESOURCE GUIDE (ARG) - ブログ版
http://d.hatena.ne.jp/arg/20071224/1198431854

一回、「図書館法改正」というテーマでワークショップをしてみたい。図書館を論じる場合、シンポジウムやパネルディスカッションをするよりも、実は聴衆も含めて、図書館法の改正案をまとめてみるといいのではないか。1日がかりになるだろうが、半日かけて各自で改正案を考え、その上でグループワークで議論し、最終的に一つの改正案にまとめてみるという構成はどうだろう。

ACADEMIC RESOURCE GUIDEのid:argさんによる、「図書館法改正」ワークショップ開催の提案。
最近では図書館ブロガー同士のオフ会が開かれるようになっているので、このような本格的な意見交換会も十分に実現可能ではないかなと思います。
なんとか実現できないものでしょうか。実現したら是非出席したいと思います。

おわりに

なんか前回よりもかなり時間がかかってしまいました。ところどころ私の感想が入っていてもはや「まとめ」ではなくなりつつありますが、そのあたりはスルーしてください。何か問題などありましたらコメントまたはブクマでご連絡ください。修正します。
ACADEMIC RESOURCE GUIDEに取り上げられたこともあり、図書館有料化に関する議論が活発になりつつあります。図書館に興味のあるブロガーの方、是非あなたなりの図書館有料化論を書いてみてはいかがでしょうか。それが、今後の図書館を変えることになるかもしれません。
私も今後また議論が進展しだい、まとめさせて頂きたいと思っています。今回のまとめの記事を書かれたブロガーの皆様、素晴らしいお話を聞かせていただきありがとうございました。