『アイデアのつくり方』と図書館
- 作者: ジェームス W.ヤング,竹内均,今井茂雄
- 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
- 発売日: 1988/04/08
- メディア: 単行本
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ヤング氏は、アイデアが生み出される原理として、次の2点を挙げています。
- アイデアは既存の要素の新しい組み合わせでしかないということ
- その新しい組み合わせを発見する才能は、事物の関連性を見いだす能力に依存すること
この原理ではつまり、アイデアが神秘的な才能によって導かれるものでなく、誰もが訓練しだいで生み出せるものであるということを示しています。アイデアは、湧くものでなく、見いだすものなのだということなのでしょう。
さらに、ヤング氏はアイデアを生み出すプロセスとして以下の5つの段階を挙げています。
極めて常識的ではありますが、書籍を読むとこれらの段階がいかに重要であるかが分かります。職場などでアイデアを生み出すのに苦心している方には是非読んでいただきたいと思います。
アイデアの生成での図書館の重要性。
ここからは図書館情報学に関する内容です。図書館情報学を学ぶ人に注目してほしいのは第一に資料を収集することからアイデアを生み出す過程が始まっていることです。この段階をいかにサポートしていくかで、その人が生み出せるアイデアが決まってくるといえるでしょう。
ヤング氏は、この段階の説明において、資料には「一般資料」と「特殊資料」の二種類が存在すると説いています。特殊資料とはその問題に関わる資料のことであり、一般資料とは教養を蓄えるのに必要な資料のことです。普通問題を解決するための資料は「特殊資料」だけあればいいという考えをすると思いますが、ヤング氏は、アイデアはこの二種類の資料の組み合わせによって生み出されるものであり、どちらも欠いてはならない存在なのだそうです。このことについて、本書では次のように説明しています。
この過程はちょうど万華鏡の中でおこる過程に似ている。万華鏡というのはデザイナー諸君が新しいパターンを探し出すのに時々使用する器具である。この万華鏡の中には色ガラスの小片が幾つも入っていて、プリズムを通してそれを眺めると、この色ガラスがあらゆる種類の幾何学的デザインを作り出すのである。クランクを廻すたびにこれらのガラスの小片は新しい関係位置にやってきて新しいパターンを現出する。万華鏡の中のこの新しい組み合わせの数学的可能性は甚だ大きく、ガラス片の数が多くなればなる程、新しい、目のさめるような組み合わせの可能性もそれだけ増大する。
つまり、一般資料を収集すると言うことはガラス片を増やすことであり、それだけアイデアを生み出す可能性が増大するということなのです。
図書館では、ありとあらゆる知識を整理するために十進分類法などの分類法が考え出され、その分類法にならって書籍やその他のメディアが分類されています。斎藤孝氏が『読書力』でも述べていますが、このように分類された本棚は見る者が持つ知識を整理するのに有用でもあります。つまり、図書館の分類は知識の間にある関連性の一側面を提示しているのであり、それはアイデアを生み出すきっかけにもなりうるのです。
コンピュータの導入によって、図書館は十進分類法以外の複数の知識の分類法を提示することが可能です。図書館に関係する人々、またはそれに類する機関に属している人が今後なすべきなのは
- 一般資料の幅を広げること
- 特殊資料を蓄積すること
- 資料の関連性を分類法によって提示すること
であるでしょう。
図書館の分類なんてつまらない、と言う人がいますが、分類法こそは図書館情報学の中心的な理論であると私は考えています。分類法を機械的に用いるだけでなく、分類法を考えることが司書には求められるのではないかと思います。そして、そのことによって、多くの人々のアイデア発想能力を増大させるのだと私は信じています。
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