「ただの日記」でも、後を追う人には役に立つ?
前回の記事に関連した話です。以前、大学で「教育心理学」という講義を受講したことがありました。教育心理学では人が学習していくメカニズムを応用した学習理論が扱われていたのですが、その中に「モデリング理論」という学習理論がありました。
- モデリング理論による新たな適応的行動の学習1
- http://charm.at.webry.info/200604/article_8.html
人間の学習行動が『他者(モデル)の行動の事例や成功・失敗の経験を観察するだけでも成り立ち、時に、そのモデリングの学習効果は実際に自分が行動する以上のものであること』を実験的に確認したのがモデリング理論であり、人間の行動メカニズムを包括的に説明する社会的学習理論(Social Learning Theory)の基盤にあるものです。
(カウンセリングルーム:Es Discoveryより)
つまり、モデリング理論とは、人は他人の行動を観察するだけでも学習をするという理論なのです。この学習形態は、観察対象が能力的に自分に近い場合であるほど効果があるようです。例えば、運動部での同輩の仲間、あるいは1年上の先輩などのほうが、野球選手を観察するよりも、学習の効果があるということです。自分に近い人間であればあるだけ自分自身に他人の経験を反映させることができるからでしょう。
ブログは、書き手の一連の思考を公開するメディアです。他人の思考を読むということは、モデリング理論における「学習」を行っているということになると思います。そうであれば、読者にとって効果的な学習が期待できるブログとは、読者と立場が近い書き手のブログということになります。
ブロガーの中には、ただの日記的な内容ではブログを書く価値が無いと考える方がいます。私もその一人でした。しかし、日記的な内容は本当に価値が無いのでしょうか。モデリング理論を照らしてみれば、決してそうであるとはいえないのではないでしょうか。日記とはその人の行動を継続的に記録したものですから、その中には多くの経験が記録されているのです。書きようによっては、完成された単体の記事よりも価値を持つことになるでしょう。
例えばシューティングゲームを作りたいと考える人が参考になるのは、完成されたプログラムコード群か、開発当初から書き続けられた開発日誌か、どちらでしょうか。もちろん、どちらも十分参考になる資料であることは変わりませんが、開発を進めていく上で起こるさまざまなトラブルを解決するためには、後者がより効果的な資料となるでしょう。
あなたがつまらないと思っているその文章は、あなたに近い立場の人にとっては十分価値があるのです。あなたがその文章を書き続ければ、それだけあなたの後を追う人を助けることになるのだと、私は思います。
参考書籍
- 作者: 杉原一昭,大川一郎,浜口佳和,新井邦二郎,藤生英行,笠井仁
- 出版社/メーカー: 福村出版
- 発売日: 1996/05/01
- メディア: 単行本
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (1件) を見る
関連記事(自サイトより)
- ブロガー最大の武器は、書き続けることにある。
- http://d.hatena.ne.jp/kunimiya/20061130/p2
- コミュニティ非依存ブログの寿命
- http://d.hatena.ne.jp/kunimiya/20060501/p2
- はてなダイアリー市民になった。
- http://d.hatena.ne.jp/kunimiya/20051027/p2