「あたりまえ」なアイデアが一番怖い
編集家の竹熊健太郎氏のブログによると、「パソコンで漫画を製作し、それを表示する手法」が特許として2004年に下りているそうです。もし権利保有者がその気になれば、漫画製作ソフト「ComicStudio」やそれを使用しているユーザーに対して権利侵害として訴訟ができるのではないかと、竹熊氏は心配しておられるようです。もっとも、コメント欄での専門家の方々によれば、申請当時に似たような漫画製作ソフトがすでに発売されていることから、特許としての有効性は低く、その心配は杞憂に終わりそうです。
竹熊氏の訴訟の可能性の指摘で思い出すのは、ジャストシステムに対して松下電機が起こした訴訟。これは、バルーンヘルプという、一般の人々にとってはどこにでもあるような機能が争点になりました。このように、皆が「あたりまえ」と思って軽視しているアイデアが、企業を足止めする脅威として利用されることがしばしばあるようです。
最近、このような訴訟を目的として特許を保有する中小企業の活動が、製品を開発する企業の事業を妨害するとして問題となっているようです。
特許権を買い集めて大手メーカーなどを相手取り、多額のライセンス料や和解金を得る「パテントトロール=特許の怪物」が企業の特許戦略を揺さぶっている。
たとえばもし、冒頭のような「あたりまえなアイデア」で製品化が難しい特許を、パテントトロールが集め、企業や個人を相手に訴訟を起こしたとしたら……米国のような訴訟戦争が起こるかもしれません。
「競合他社のクレームなら訴訟になっても他の特許権侵害で訴え返せる。だが、相手の実態が特許売買だけでは、事業差し止めの脅威にさらされる大手企業が不利」と企業の知財担当者は声をそろえる
「あたりまえ」なアイデアが、実は一番怖いのかもしれません。