図書館情報学を学ぶ

はてなダイアリーで公開していたブログ「図書館情報学を学ぶ」のはてなブログ移行版です。

U40プレミアセッション問題、自分なりの意見

実は前回の記事を書いていたときに既に申し込んでいたのですが、全国図書館大会U40プレミアセッションに私も参加することとしました。
参加者へのメッセージには、自分なりに語りたい図書館のテーマについて書いてみました。簡単に言えば、図書館の根本的な目的であった「情報の共有」と「学習環境の互助」を今の図書館制度をすべて脇において考えると、どんな実現方法があるのか、ということを図書館関係者と語りたいと考えています。
先週末に、プレミアムセッションの参加制限について議論がおこりました。それぞれの議題は私も非常に重要な問題意識と感じましたが、議論を追った後の率直な感情としては「やってみないとわからないのではないか」ということでした。

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要点:全国図書館大会U40プレミアセッション問題( at Twitter)

最近Twitterに絶賛引きこもり中の私です、お久しぶりです。
今年10月29日に全国図書館大会にて「U40プレミアムセッション」という年齢制限つきの企画が立ち上がっているようです。

具体的には、その制限とは以下のようなもののようです(参照:http://futurelibrarian.g.hatena.ne.jp/)

  • 40歳以上の図書館関係者は発言を控えてオブザーバーとして参加する
  • 委託・指定管理など、いまの図書館の目の前の話は禁止

ところが、その制限に問題があると、 id:min2-fly さんを中心としてTwitterにて議論が巻き起こっていたようです。

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図書館と一般人が新聞社の脅威になった日

猥褻記事問題に関する毎日新聞の謝罪に虚偽があったという話。毎日新聞側では「9年前のウェブ版スタートから猥褻記事の問題が発生していた」と内部調査結果で述べていたが、今回11年前にも猥褻記事が載っていたということが発覚したらしい。
ここで興味深いのは、11年前の記事を大学図書館国立国会図書館マイクロフィルムから入手したということ

414 名前:名無しさん@九周年[] 投稿日:2008/08/11(月) 21:51:17 id:dd6VF8p80
なお、物証自体はここで手に入ります。
http://sinbun.ndl.go.jp/cgi-bin/outeturan/E_S_kan_lst.cgi?ID=007278

007278  The Mainichi Daily News(創刊:1960) マイクロ資料
独協大学図書館
国際基督教大学図書館
国立国会図書館
毎日新聞東京本社情報調査部
東京大学大学院情報学環・附属社会情報研究資料センター
早稲田大学図書館
新聞ライブラリー/日本新聞教育文化財毎日新聞大阪本社調査審議室図書室
福岡大学図書館
神戸学院大学附属図書館

上記の図書館にてマイクロフィルム資料として残っている物を
プリントすれば記事が手に入ると思われ。 

たぶん雑誌記事索引や図書館内のデータベースシステムを利用して見つけ出したのだと思うのだけど、司書過程を履修した自分から見ても凄い調査能力だ。発見した記事をエクセルにきれいにまとめているところとか、神がかっている。。。
調査したのは俗に「鬼女板」(既婚女性板の略)と呼ばれる2ちゃんねるの板に集う主婦の方々らしい。もしかすると、司書資格を持つ人や、図書館勤務経験のある人がいたのではないだろうか。マイクロフィルムの存在など、図書館について勉強でもしない限り分からないような気がする。もしそうだとしたら、司書課程の設置が図書館員養成とは別の方向で効果を発してきているのかもしれない。
今回の告発そのものの意義についてはさておいても、図書館のコレクション保存の重要性が近年で最も示された出来事ではないだろうか。インターネットの情報網と図書館の雑誌記事コレクションが組み合わさると、時を超える脅威的なメディア監視システムへと化けることが示されたのである。
はたしてこの監視装置が効果を発するのは毎日新聞だけか、もしくは別の新聞社もまた危険性があるのかもしれない。なにしろ、すでに書いたものは国立国会図書館に永久に保存されているのだから……。

追記

マイクロフィルムなんて誰でも知ってる」というブクマコメント多数。冷静に考えてみれば歴史の調査が必要な卒業研究をなさっていた方などは常識的な知識・スキルでしょうね。思慮の浅い発言でした。反省します。
補足しておきますと、自分自身はマイクロフィルムで新聞記事が保存されているということは大学の講義を通して知っていましたし、図書館に実習に行った際に使用方法も教わりました。利用者の方への補助なども若干しました。
上記で伝えたかったのは歴史学などの専門的な場ではないところでマイクロフィルムという媒体が登場したことに驚いたということです。マイクロフィルムの再生機が減ってきているというお話も聞くので、こうやってしっかり活用されている例が現われていたことが嬉しかったわけですね。

「トータルで見る」とチェックリスト

先日の図書館サービスの話と関連して。リポジトリ立ち上げのためのチェックリストが英国で作成されているそうですね。
リンク先を見る限りはシステム構築が中心の話になっているようです。広報や人材に関するチェックリストなどがあれば、「トータルで見る」助けに繋がるかもしれませんね。

上記のid:katz3さんが提示している失敗の変遷は、視点を変えるとチェックリストとして変換できるかもしれませんね。具体的には、「横断検索の提案」の失敗要因として類似サービスのリサーチ不足が本文中に挙げられていますが、これは横断検索に限らずサービスを立ち上げ全般に関わることなので、チェックリストの項目となりそうですね。

追記

チェックリストとしては、はてブ上で話題になっている「http://d.hatena.ne.jp/ikomaru/20080627」も参考になりそうですね。

「トータルで見る」と失敗学

「トータルで見る」という考え方は図書館だけでなく、様々なサービス運営で重要なことだと思うのですが、それを学ぶのはなかなか難しいですね。まずどのぐらいの観点をもてば「トータル」になるのかは、運営経験が相当無いと判断できない。本来「トータルで見る」能力は経験を重ねた経営者のみが持つものではないかと思うのです。
それを経験の無い自分がいかに学べるか。すぐに考えつくものとしては「他人の失敗を観察する」こと、いわゆる失敗学から観点を学ぶ方法ですね。ただ、そのためには「どのサービスが失敗か」ということを知らなければ学べない。
そこでやはり既存のサービスを遠慮無く批判できる場が必要なのかなあと思います。車やスペースシャトルと異なり事故などの明確な失敗が現れにくい分野なので。

ブックハンティングは大学に利益を与える 〜プロジェクト型ブックハンティングの提案〜

ブックハンティングについての議論が図書館系ブログ内で広がっています。詳しくは先日作成した上記まとめ記事を参照して頂きたいのですが、主要な点としては「学生の選んだ本」=「大学図書館にとってふさわしい蔵書」なのか?という点。ブックハンティングを通してベストセラー小説が多く選書されている点に着目して、この点に懐疑を示したのが前半の記事群だと思います。これに対し、では通常の選書でその種の本はどれほど蔵書されているのかNacsis-Webcatを用いて全国の大学図書館を調査したのが後半のid:humotty-21id:min2-flyさんの記事になります。

選書の本当の問題点は?

議論の流れを見る限り、ブックハンティングが通常の図書館員による選書よりも、「大学図書館にふさわしくない」と思われるような本を選ぶリスクが高いという最初に提示された問題点は否定されているようです。むしろ、その問題点は選書作業全体に広がっていったように思います。
大学図書館は、学生や研究者の研究を効率的に支援する目的で設立されており、資料を購入・提供するのも大学全体の資料費を節約するという目的があります。*1そのため、研究とは関係の無い資料を購入するということは大学にとって損失を意味する。これがベストセラー小説が選書されることへの批判の理由だと思います。もしその批判が正しいとするならば、上記のお二方の調査を見る限り、通常の図書館員による選書で既に損失が発生しているといえるでしょう。
しかし、必ずしもベストセラー小説が損失を発生させているとはいえません。何故なら、文学などの分野ではそれらが研究材料として活用することが十分あり得るからです。芥川賞作家の著作であれば、芥川賞の歴史を研究する学者にとっては立派な研究資料です。そして、他の流行書籍に対しても、このようなことがあり得ます。そのような可能性を考えずに、ただそれらを「ふさわしくない本」として断定してしまうのは、研究に対する偏見といえるでしょう。このあたりが、選書業務の評価の難しいところであると思います。
つまり、選書において問題視されるのは、本当は選ばれた本自体ではなく、その生産性にあるわけです。

ブックハンティングの利点

本の生産性という観点でブックハンティングを見てみると、1つの利点が浮かび上がります。それは、資料を学生がどのように活用するか、そのユースケースを収集できるチャンスを得られるという点です。これは、選書された資料の生産性を評価するための有効な材料になります。そして、それは選書方針を最適化させることへと繋がるのではないか、と思います。ユーザーテストを通じてサービスの機能・デザインを修正していくというような、ユーザー中心設計を行えるのではないか。そのサイクルを上手く作れれば、ブックハンティングは大学に利益を与えるのではないか?というのがブックハンティングに対する私の考えです。
ブックハンティングをこの観点で見ると、1つの「なすべきこと」が浮かび上がります。それは学生の学習プロセス全体を見守るということです。サービステストとしてブックハンティングを見た場合、単に選書して終わり、では結果を出せたことにならない。その資料がいかに活用されたか、追跡調査する必要があります。さらに、ブックハンティングの環境も、想定外の影響要素が無いように整える必要がある。そう考えていくと、サービステストとしてのブックハンティングは学習プロセス全体に関与していく必要があると思います。

「プロジェクト型ブックハンティング」の提案

では、具体的にそのようなブックハンティングとはどのようなものか?私は「プロジェクト型ブックハンティング」という方式を提案したいと思います。
ブックハンティングが批判されるのは選書された書籍が本当に活用されるのかが分からないという点です。ならば、選書した書籍を活用するところまでサポートしてしまえばいい。
具体的には、大学のカリキュラムと連携して、講義中にブックハンティングを導入させることが考えられます。指定図書制度と異なる点は、学生自身が参考になると思う資料を選べるという点、そして資料の探し方、選び方を履修生間で共有できるという点です。
また、「自分を知る」ための書籍などは、就活セミナーなど大学のカリキュラム外のイベントと連携すればいい。要は、大学中のあらゆる団体とブックハンティングを通じたコラボレーションをしていくのです。
このように、ブックハンティング単体で行うのではなく、学習全体のプロセスに埋め込んで実施する形式であれば、単に趣味のために流行の書籍を選ぶという行動も抑止でき、効果的な選書方針を作る材料になるという点で大学にとって利益を生むことができるのではないでしょうか?

*1:詳しくはid:min2-flyさんがhttp://d.hatena.ne.jp/min2-fly/20080103/1199395653で書かれています